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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人
2025.09.08

ダニアレルギーの治療では、症状を和らげる抗アレルギー薬のほか、体質改善を目指す舌下免疫療法薬も選択肢として注目されています。
この記事では、ダニアレルギーの治療薬の種類や特徴、舌下免疫療法の効果や副作用までわかりやすく解説しています。
「かゆみや鼻づまりがつらい」「夜も眠れない」など、慢性的なアレルギー症状にお悩みの方は、治療法を検討する際にお役立てください。
目次
ダニダレルギーの舌下免疫療法とは?根本的な体質改善を目指す治療法

ダニアレルギー治療の中でも、舌下免疫療法は体質そのものを変えることを目的とした治療法です。
アレルギーの原因であるダニ抗原を少量ずつ体内に取り入れて免疫反応を調整し、長期的な症状軽減や寛解を目指します。
- 舌下免疫療法に期待できる効果
- 舌下免疫治療薬の服用方法と適応条件
- 舌下免疫療法の継続期間は3〜5年
それぞれ詳しく解説していきます。
舌下免疫療法に期待できる効果

舌下免疫療法は、くしゃみ、鼻づまり、皮膚のかゆみなどのダニアレルギー症状の緩和に一定の効果が認められています(※1)。
アレルギー体質そのものの改善を目指せるため、根本治療に近い効果が期待できます。
継続して治療を行うことで症状の改善が進み、薬に頼らず生活できる期間が増えるため、QOL(生活の質)の向上という観点からも注目されています。
舌下免疫療法の効果を最大限に引き出すためには、医師の指示に従い、計画的に治療を続けることが重要です。
(※1 参考)日本アレルギー学会|ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版)
舌下免疫治療薬の服用方法と適応条件

舌下免疫療法を行うには、血液検査や皮膚テストでアレルギーの確定診断を受ける必要があります(当院では血液検査を採用しています)。
検査でダニアレルギーと診断され、医師が適応を認めた場合に舌下免疫療法を開始できます。
一般的な舌下免疫療法の進め方、服用方法、適応年齢などを以下の表にまとめています。
舌下免疫療法 | 治療方法の詳細 |
投与方法 | アレルゲン錠剤または液を舌下投与し、1分程度保持した後に飲み込む |
実施場所 | 初回は医療機関で実施、以降は自宅で投与 |
投与頻度 | 1日1回 |
治療期間 | 3年以上の長期継続が推奨 |
適応年齢 | 原則5歳以上が対象 ※当院では6歳以上から開始可能 |
※1
舌下免疫治療薬は、飲み込む前に舌の下で約1分間保持する必要があるため、特に小児では保護者のサポートは欠かせません。
初回以降は自宅で治療を続けられる手軽さはありますが、正しい服薬と日々の自己管理が求められます。
治療の安全性と効果を損なわないよう、飲み忘れや自己判断での中断などには注意が必要です。
(※1 参考)日本アレルギー学会|アレルゲン免疫療法の手引き2025
舌下免疫療法の継続期間は3〜5年
舌下免疫療法による体質改善を目指す場合は、3〜5年の継続が推奨されます(※1)。
十分な期間をかけて免疫システムの変化を促すことで、アレルギー症状の再発リスク低減と、長期的な寛解状態を目指すためです。
治療開始から1年経過しても効果が得られない場合には、継続可否や治療方針の見直しが行われます。
なお、効果の発現時期や改善の程度には個人差があるため、経過を医師と共有しながら、長期的な計画に基づいて治療を継続することが重要です。
(※1 参考)日本アレルギー学会|アレルゲン免疫療法の手引き2025
ダニアレルギーの舌下免疫治療薬「ミティキュア」について

ミティキュアは、ダニアレルギー性鼻炎の治療に用いられる舌下免疫療法薬で、ダニを原料とするエキスから作られています
ダニアレルギーの体質改善に関心のある方に向けて、ミティキュアの効果や副作用の目安が理解しやすいよう整理しました。
- ミティキュアにより症状改善を実感する人は約8割
- ミティキュアの効果を実感し始めるのは数ヶ月~1年程度
- ミティキュアの主な副作用
それぞれ順に解説していきます。
ミティキュアにより症状改善を実感する人は約8割

ミティキュアを継続的に服用した場合、アレルギー症状の改善を実感する方は約70〜80%と報告されています(※1)。
また、ほぼ無症状となる、または薬の服用が不要になる「完治に近い状態」に達する方は約15〜20%という研究データが確認されています(※2)。
一方、効果が感じられなかった方も一定数存在し、臨床試験や観察研究の統計では約20%が「効果の実感が乏しい」と回答しています。
ミティキュアの効果には個人差があるため、「必ず全員完治する治療」ではなく、多くの患者で症状緩和が期待できる長期的治療法という理解が大切です。
(※1 参考)鳥居薬品株式会社|ミティキュアダニ舌下錠3,300 / 10,000JAU
(※2 参考)湯田 厚司 他|ミティキュア錠によるダニ舌下免疫療法115例の3年間治療成績
ミティキュアの効果を実感し始めるのは数ヶ月~1年程度

一般的に、ミティキュアによるアレルギー症状の改善を実感し始めるまでには、数ヶ月〜1年程度かかるとされています。
臨床試験では、8〜12週間で鼻炎症状が改善した症例も報告されていますが、自覚的な効果を十分に感じるのは半年〜1年以降が多いです。
ミティキュアの製造販売元が公表している臨床成績では、投与開始から数ヶ月後に改善傾向が現れ、年単位の継続で変化がより顕著になることが示されています。
舌下免疫療法は3年以上の長期的治療が推奨されるため、短期の変化にとらわれず、根気強く継続することが求められます。
ミティキュアの主な副作用
現時点で、ミティキュアによる重篤な副作用の報告はありませんが、軽度の副作用が現れることがあります(※1)。
主な症状には以下が挙げられます。
- 口内や舌の腫れ
- 口内炎、舌炎
- 唇の腫れや違和感
- 喉の刺激感、違和感
- 耳、鼻、目、皮膚のかゆみ
- お腹の不快感
これらの副作用は、投与開始後の数週間に現れやすいものの、ほとんどの場合は軽度で自然に軽快するとされています。
ただし、症状が強い場合や長引く場合は投与を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
治療の安全性を高めるためには、服薬時の体調や変化を記録し、定期受診の際に医師と共有することが推奨されます。
(※1 参考)鳥居薬品株式会社|ミティキュアダニ舌下錠3,300 / 10,000JAU
かゆみや鼻づまりなどに効く市販の抗アレルギー薬の種類と特徴

市販の抗アレルギー薬は、かゆみや鼻づまりなどの症状を一時的に和らげる効果があります。主な種類は以下の3つです。
- 第二世代抗ヒスタミン薬:副作用が少なめ、持続性がある
- 第一世代抗ヒスタミン薬:鎮静作用が強い、効果発現が早い
- ステロイド薬:局所的な症状に有効
それぞれの薬の特徴や注意点などを解説します。症状や生活スタイルに合わせた薬選びの参考にしてください。
第二世代抗ヒスタミン薬:副作用が少なめ、持続性がある

第二世代抗ヒスタミン薬は、眠気やだるさなどの副作用が比較的少なく、日常生活への影響が少ないことが特徴です。
鼻づまり、目や皮膚のかゆみなどの幅広いアレルギー症状に対して有効とされ、1日1〜2回の服用で効果の持続が期待できます。
長期的な安全性の高さから、医療機関の薬物治療でも初期治療の選択肢とされることも多く、活動的な毎日を送る方にも使いやすいとされています。
第一世代抗ヒスタミン薬:鎮静作用が強い、効果発現が早い

第一世代抗ヒスタミン薬は、効果の発現が比較的早く、急なアレルギー症状にも対応しやすい薬剤です。
しかし、中枢神経に作用しやすく、眠気や集中力低下などの副作用が現れやすいため、日中の使用には注意が必要です。
特に小児では、学習への影響や、稀に痙攣を誘発するリスクが報告されており、慎重な使用が求められます(※1)。
即効性を求める場合でも、副作用のリスクを考慮し、短期間での使用にとどめることが望ましいとされています。
(※1 参考)東北大学大学院医学系研究科機能薬理学 谷内一彦|薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療
ステロイド薬:局所的な症状に有効

ステロイドを含む市販薬は、鼻スプレーや点眼薬など局所的に使用するタイプが主流です。
ステロイドの強力な抗炎症作用により、強い鼻づまりや目のかゆみなど特定の症状に高い効果を示します。
局所的な使用であれば全身的な副作用リスクは低いものの、長期連用は粘膜の萎縮や感染症リスクの増加につながるため、用法・用量を守ることが重要です。
一定期間使用しても改善が見られない場合は、医療機関で原因の特定と適切な治療を受けることが推奨されます。
ダニアレルギーの舌下免疫治療の費用目安
舌下免疫療法の費用は、健康保険3割負担の場合、年間でおよそ30,000〜40,000円程度が目安とされます。
以下に、適応判断に必要なアレルギー検査を含む、初年度の費用目安の内訳を表形式でまとめました。
内容 | 費用目安(3割負担) |
アレルギー検査 | 約4,000〜5,000円 |
初回投与(診療+薬剤費用) | 約1,000円前後 |
2回目以降月1回通院(診療+薬剤費用) | 約2,700〜3,000円 / 月 |
1年目はアレルギー検査費用が加算されますが、2年目以降は主に診療と薬剤費用のみとなります。
自己負担額はお住まいの自治体の助成制度、年齢区分、医療機関の運用方針などにより変動する場合があります。
治療費は決して軽い負担とはいえないため、開始前に受診先の費用や自治体の助成制度について確認しておくことをおすすめします。
舌下免疫療法を受けられないケース(禁忌・適応外)

舌下免疫療法はすべてのダニアレルギー患者に適応されるわけではありません。
以下のような場合には、安全性や有効性の観点から治療を行わない、または慎重な判断が必要です。(※1)。
- 舌下免疫治療薬でショックを起こした既往
- 気管支喘息
- アレルゲンエキスによる強いアレルギー反応の既往
- 重篤な全身疾患(悪性腫瘍、自己免疫疾患など)
- 口腔内の傷や炎症
- 非選択的β遮断薬の投与中
- 三環系抗うつ薬・MAOIの投与中
- 心疾患、肺疾患、高血圧症
- 全身性ステロイド薬の投与中
- 妊娠中・妊娠の可能性がある女性
- 授乳中の女性
- 5歳未満の幼児(当院では6歳以上から適応可能)
- 高齢者
これらに該当する場合、既存疾患の悪化や副作用重症化、免疫抑制による効果減弱などのリスクがあります。
なお、最終的な適応可否は、個々の病状や服薬状況などから総合的に判断されます。
よくある質問
ダニアレルギーの治療薬についてよくある質問をまとめました。
Q.舌下免疫療法はダニアレルギーに効果なしと聞きましたが本当ですか?
舌下免疫療法は、すべてのダニアレルギー患者に効果が現れるわけではありません。
臨床試験では約8割で症状改善が報告されていますが、効果が乏しい例もあります。
短期間では効果を実感しにくいため、年単位での長期治療が推奨されます。治療継続の可否は、医師と相談しながら判断することが重要です。
Q.舌下免疫療法はハウスダストアレルギーに効きますか?
ハウスダストアレルギーの原因が主に「ダニ」である場合、舌下免疫療法の効果が期待できます。
ハウスダストにはカビや繊維など他の物質も含まれるため、舌下免疫療法の適応にはダニアレルゲンの特定が必要です。
Q.ダニアレルギーを治す薬はありますか?
現時点で、アレルギーそのものを完全に治す薬はありません。
舌下免疫療法は体質改善を目指す治療として注目されていますが、必ずしも全員が完治するわけではなく、効果には個人差があります。
まとめ

ダニアレルギーの薬には、体質改善を目指す舌下免疫療法薬や、かゆみ・鼻づまりなどの症状を抑える抗アレルギー薬があります。
市販薬は一時的なアレルギー症状の改善に有効とされますが、作用の仕方や副作用の特徴を理解して選ぶことが大切です。
ふくろうの森クリニックでは、ダニアレルギーの検査・治療を行っています。
薬物療法、舌下免疫療法のいずれにも対応しており、症状や年齢に応じた治療法を提案しております。
「アレルギー症状で日常生活に支障が出ている」
「家にいると鼻や目がムズムズする」
「子どもがダニアレルギーかも…」
このようなお悩みがある方は、一度ご相談ください。
当院では、ご家族でのご相談も可能です。花小金井駅から徒歩5分。待ち時間の少ないネット予約もご利用いただけます。

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