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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人

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2025.06.27

アトピー性皮膚炎のかゆみや湿疹の改善には、皮膚科での治療に加えて、日々の食事内容も大切です。

この記事では、アトピーにいいとされる栄養素や食材、亜鉛・オメガ3脂肪酸の摂取量の目安、症状を悪化させやすい食べ物について解説します。

食事から取り組むアトピー対策として、ぜひ参考にしてください。

アトピーのかゆみや皮膚症状の改善に期待できる栄養素を含む食材

アトピー性皮膚炎の症状を和らげるためには、肌のバリア機能や免疫調整に関与する栄養素の摂取が重要です。

以下は、アトピーのかゆみや皮膚症状の改善に期待できる栄養素と代表的な食材です。

  • 亜鉛:牡蠣、赤身の肉、ナッツなど
  • オメガ3脂肪酸:サバ、イワシ、亜麻仁油など
  • ビタミンD:きくらげ、しらす、イワシなど
  • ビタミンA:牛レバー、鮭、にんじんなど
  • プロバイオティクス:ヨーグルト、納豆、味噌など

それぞれ詳しく解説していきます。

亜鉛:牡蠣、赤身の肉、ナッツなど

亜鉛は皮膚のターンオーバーやコラーゲン合成、細胞の生成に関わる栄養素です。

免疫細胞の働きを高め、炎症物質の産生を抑えることで、アトピーによるかゆみや炎症の軽減が期待できます。

亜鉛が不足すると、皮膚のバリア機能や修復能力が低下し、皮膚炎やアトピーの悪化を招く可能性があります(※1)。

特に、日本人は食事からの亜鉛摂取量が推奨値を下回ることが多く、亜鉛が含まれる食材を意識的に取り入れることが推奨されます。

(※1 参考)PMC|Zinc and Skin Disorders

オメガ3脂肪酸:サバ、イワシ、亜麻仁油など

オメガ3脂肪酸は細胞膜の健康を維持し、肌の柔軟性を高めて乾燥を防ぐ働きがあります。

オメガ3脂肪酸の中でも、海産物に多いEPA・DHAの抗炎症作用により、アトピーのかゆみや皮膚の赤みを和らげる効果が期待されています。

さらに、皮膚のアレルギー反応を抑えることで、細胞の正常な分化や修復が促され、バリア機能の回復にもつながります(※1)。

アトピー性皮膚炎の症状管理には、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれる青魚や特定の植物油を意識的に取り入れるとよいでしょう。

(※1 参考)京都大学|魚油に多く含まれるオメガ3脂肪酸が皮膚アレルギー反応を抑制する機序の解明

ビタミンD:きくらげ、しらす、イワシなど

ビタミンDはカルシウムや骨の代謝に関わる栄養素として知られています。

近年では、炎症を引き起こすサイトカインを抑制し、アレルギー症状の緩和や免疫バランスを整える働きが注目されています。

アトピーの重症度はビタミンDの欠乏と関連する可能性が指摘されており、一部の研究ではビタミンDの補給で症状が改善した例も報告されています(※1)。

ビタミンDは食品からの摂取だけでなく、日光浴によっても体内で合成されます。日光浴によるビタミンD生成時間の目安は、夏は5~10分、冬は30〜40分程度です(※2)。

(※1 参考)PMC|Atopic dermatitis and vitamin D: facts and controversies

(※2 参考)独立行政法人国立環境研究所|体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定

ビタミンA:牛レバー、鮭、にんじんなど

ビタミンAは、皮膚のターンオーバーやバリア機能をサポートし、乾燥や肌荒れを防ぐ働きがあります。

さらに、免疫細胞の働きを活性化し、アトピー性皮膚炎の症状を改善する可能性が示唆されています。

ビタミンAが不足すると皮膚や粘膜の正常な分化が妨げられ、皮膚のごわつき、乾燥、毛穴の詰まりなどが現れやすくなります。

ただし、ビタミンAの過剰摂取は皮膚炎やアレルギー反応を悪化させるリスクがあるため注意が必要です(※1)。

特にレバーやうなぎはビタミンAを多く含むため、食べ過ぎには注意しましょう。

(※1 参考)東京大学|過剰なビタミンAが引き起こす皮膚炎の原因を解明

プロバイオティクス:ヨーグルト、納豆、味噌など

プロバイオティクスは腸内環境を整え、免疫の過剰な反応を抑える作用があると考えられています。

免疫機能に影響を及ぼす腸内環境の乱れは、アトピー性皮膚炎の悪化要因の一つとされています。

実際に、韓国の大学病院による研究では、アトピー患者の腸内フローラにおいて、抗炎症作用や免疫調整に関わる腸内細菌のバランス異常が認められています(※1)。

プロバイオティクスはヨーグルトや納豆などの発酵食品に多く含まれており、日本人の食生活にも取り入れやすい食品です。

(※1 参考)JACI|Faecalibacterium prausnitzii subspecies–level dysbiosis in the human gut microbiome underlying atopic dermatitis

アトピーに不足しやすい亜鉛・オメガ3脂肪酸はサプリもおすすめ

アトピー性皮膚炎の方は、皮膚の再生や慢性的な炎症の調整に亜鉛やオメガ3脂肪酸の消費量が増え、体内の亜鉛が不足しやすい傾向があります。

食事だけで十分な栄養を摂ることが難しい場合は、サプリメントの活用もおすすめです。

1日あたりの亜鉛・オメガ3脂肪酸の目安摂取量は以下の通りです。

  • 亜鉛の摂取量目安:1日8〜11mg
  • オメガ3脂肪酸の摂取量目安:1日1.7~2.2g

それぞれ詳しく解説していきます。

亜鉛の摂取量目安:1日8〜11mg

亜鉛の1日の摂取推奨量は、成人男性で約11mg、成人女性で約8mgとされています(※1)。

以下の表は、亜鉛を豊富に含む代表的な食品と100gあたりの亜鉛含有量です。

亜鉛を多く含む食品100gあたりの亜鉛含有量
牡蠣(生)14mg
パルメザンチーズ7.3mg
イワシ(煮干し)7.2mg
牛肉(もも)6.6mg
ホタテ6.1mg
カシューナッツ5.4mg

※2

現代の日本人の食生活は、おにぎりやパン、麺類など炭水化物中心になりがちで、亜鉛を多く含む食材の摂取が不足しやすい傾向があります。

アトピー性皮膚炎の方や亜鉛不足が気になる場合は、食事とサプリメントの併用も検討するとよいでしょう。

ただし、亜鉛の過剰摂取は吐き気や嘔吐などの健康被害をもたらすリスクがあります。必ず、製品表示に記載された用量を守って使用してください。

(※1 参考)厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2025年版)

(※2 参考)文部科学省|食品成分データベース

オメガ3脂肪酸の摂取量目安:1日1.7~2.2g

オメガ3脂肪酸は体内で合成できないため、魚類や油からの摂取が不可欠な必須脂肪酸です。

成人における1日あたりの目安摂取量は、男性で約2.2g、女性で約1.7gとされています(※1)。

以下は、オメガ3脂肪酸を多く含む代表的な食品と100gあたりの含有量です。

オメガ3脂肪酸を多く含む食品100gあたりのオメガ3脂肪酸含有量
えごま油58.3g
亜麻仁油56.6g
チアシード19.4g
まぐろ(脂身・生)6.7g
イワシ(缶詰)4.2g
サバ(焼き)3.1g

※2

近年は健康志向の高まりにより、えごま油、亜麻仁油、チアシードなどの植物由来オメガ3脂肪酸は、一般の食品として手に入りやすくなっています。

一方で、日本人の魚類摂取量は減少傾向にあり、食事だけで十分に補うのが難しい場合もあります。

オメガ3脂肪酸はアトピー性皮膚炎への有効性が多く報告されているため、サプリメントも活用しながら意識的に摂取しましょう。

(※1 参考)厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2025年版)

(※2 参考)文部科学省|食品成分データベース

アトピー性皮膚炎の症状を悪化させやすい食べ物

アトピー性皮膚炎の症状を悪化させやすい食べ物には個人差がありますが、一般的に以下のような食品が挙げられます。

アトピーを悪化させやすい食べ物食品例理由
アルコールビール、ワイン、日本酒、奈良漬など血管拡張や皮膚の乾燥を招き、炎症やかゆみ悪化のリスクがある
香辛料唐辛子、カレー、わさびなどカプサイシンなどの辛味成分が、かゆみや炎症を増幅させる可能性がある
乳製品牛乳、チーズ、バターなどアレルギーや炎症の助長、腸内環境の悪化による免疫バランスへの影響が懸念される
甘いもの(糖分)チョコレート、ケーキ、清涼飲料水など血糖値の急上昇が炎症を悪化・促進する場合がある

これらの食品は、一般的にアトピー症状を悪化させるリスクが指摘されていますが、すべての人に当てはまるわけではありません。

日頃から食べたものと自身の体調を観察し、症状に不安がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

アトピーと食物アレルギーの混同に注意|関与はあるが原因ではない

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは関連があるものの、必ずしも直接的な因果関係があるとは限りません。

かつては「食物アレルギーがある子がアトピー性皮膚炎を発症する」と考えられていました。

近年では、皮膚のバリア機能の低下により食物成分が体内に侵入し、食物アレルギーが発症しやすくなるという仕組みが明らかになっています。

一部の食べ物がアトピーの症状を悪化させているケースもあるため、原因の特定には医師による診断が不可欠です。

なお、自己判断での食事制限は栄養不足や成長を妨げるリスクがあるため、医師の指導のもとで慎重な対応が望ましいです。

アトピーにいい食べ物に関するよくある質問

アトピーにいい食べ物に関するよくある質問をまとめました。

Q.亜鉛のサプリでアトピーが治るって本当ですか?

亜鉛サプリメントの補給で症状が改善した例はありますが、治療効果を裏づける科学的な根拠は十分ではありません。

サプリメントは治療の主軸ではなく、医師と相談しながら補助的な活用が推奨されます。

Q.コンビニの食べ物はアトピーによくないですか?

すべてのコンビニ食品がアトピーに悪いわけではありません。ただし、加工食品や添加物が症状を悪化させることもあるので注意が必要です。

食品を選ぶ際は、添加物の少ないものや素材に配慮された商品を選ぶとよいでしょう。

Q.アトピーは子どもに遺伝しますか?

アトピー性皮膚炎そのものが必ず遺伝するわけではありませんが、アレルギーを起こしやすい体質は遺伝しやすいとされています。

アトピー発症において遺伝はあくまで素因の一つであり、環境や生活習慣など複数の要因が関与しています。

まとめ

アトピーには亜鉛やオメガ3脂肪酸など、バリア機能や免疫に役立つ栄養素が含まれる食べ物が良いとされています。

しかし、アトピー症状の悪化要因には個人差があり、同じ食材でも体質によって影響が異なります。

アトピー悪化の原因に食べ物が疑われる場合は、自己判断での食事制限ではなく、医師に相談して原因を見極めることが大切です。

ふくろうの森クリニックでは、アトピー性皮膚炎の症状やお悩みに合わせた治療を行っています。

お子さまのアトピーにも対応しており、ご家族でのご相談も可能です。

「湿疹やかゆみがなかなか治まらない」

「もしかしてアトピーかもしれない」

「食事や生活習慣のアドバイスも聞きたい」

このようなお悩みがある方は、当院へご相談ください。

花小金井駅から徒歩5分。待ち時間の少ないネット予約もご利用いただけます。

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