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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人
2025.08.04


子どものくしゃみや目のかゆみ、湿疹など…いつまでも続く不快な症状はダニアレルギーが原因かもしれません。
子どものダニアレルギーは慢性化しやすく、日常生活や睡眠の質に影響を及ぼすこともあります。
この記事では、子どものダニアレルギーの症状や治療法、発症しやすい年齢やダニ対策まで詳しく解説しています。
早期発見や日々のケアの参考として、ぜひ最後までお読みください
目次
ダニアレルギーになるのはなぜ?原因と発症のメカニズム

ダニアレルギーの主な原因は、ダニの死骸やフンに含まれるタンパク質(アレルゲン)です。
日本の家庭には、コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニが多く生息し、アレルゲンの供給源となっています。
吸い込んだダニの死骸やフンが体内で異物と認識されると、ヒスタミンなどの化学物質が大量に放出され、くしゃみ・鼻水・かゆみ・湿疹などのアレルギー反応が現れます。
ダニは一年中室内に生息しているため、アレルギー症状は季節を問わず通年で現れる傾向があります。
花粉症のように特定の季節だけ対策するのではなく、一年を通して継続的なダニ対策が必要です。
ダニアレルギーの子どもによくある症状

子どものダニアレルギーでは、以下の症状がよく見られます。
- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性結膜炎
- 皮膚症状
それぞれの症状や特徴について詳しく解説していきます。
気管支喘息

ダニアレルギーは小児の気管支喘息の発症・悪化に深く関連しています。
ダニの死骸やフンに含まれるアレルゲンを吸い込むと、免疫反応により気管支に炎症や過敏反応が生じます。
気管支の炎症により気道が狭くなることで、以下のような典型的な喘息症状が現れます。
- 咳
- 息苦しさ
- 喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)
年間を通して咳や鼻水などの症状が続く場合は、喘息の前兆である可能性があるため注意が必要です。
また、幼少期からダニによるアレルギー症状が続くと、成長に伴い喘息を発症するリスクが高まると指摘されています(※1)。
子どもの喘息予防や症状のコントロールには、早期から家庭内のダニ対策と医療的介入が重要です。
(※1 参考)松根 彰志|小児アレルギー性鼻炎診断の問題点とその克服の意義
アレルギー性鼻炎

子どものアレルギー性鼻炎は、ダニが主な原因であることが多く、特に10歳未満で発症リスクが高いとされています。
ダニによるアレルギー性鼻炎の主な症状は以下の通りです。
- くしゃみ
- 鼻水(鼻漏)
- 鼻づまり(鼻閉)
- 鼻づまりによる頭痛や口呼吸
- 鼻のかゆみ
これらの症状は風邪のように短期間で治るものではなく、長期間にわたるのが特徴です。
ダニアレルギーを持つ子どもはアデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)が肥大しやすく、慢性的な鼻づまりを引き起こすことがあります(※1)。
アデノイド肥大は小児の睡眠時無呼吸症候群(OSA)の一因となる場合もあり、睡眠障害による成長への影響が懸念されます。
気になる症状が続く場合は、医療機関で検査と早期治療を受けることが推奨されます。
(※1 参考)PMC|Adenoid Vegetation in Children with Allergic Rhinitis
アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎は、ハウスダストに含まれるアレルゲンが原因となり、特にダニは通年で結膜炎の発症要因となることが知られています。
ダニによるアレルギー性結膜炎では、以下のような症状が見られます。
- 目のかゆみ
- 目やに
- 充血
- 涙が出る(流涙)
- 異物感(ゴロゴロする感じ)
子どもではかゆみを我慢できず、繰り返し目をこすってしまい、症状が長引いたり悪化するケースも少なくありません。
重症化すると白目がぶよぶよと腫れたり、水分が溜まって飛び出すような腫れ方になることもあります。
子どもが頻繁に目の不快感を訴える場合は早めに眼科を受診し、原因の特定や治療、環境の見直しを行うことが大切です。
(※1 参考)東邦大学医療センター|通年性アレルギー性結膜炎
皮膚症状

ダニアレルギーによる皮膚症状は、広範囲かつ慢性的に現れやすいのが特徴です。
代表的な皮膚症状には以下が挙げられます。
- 湿疹
- 赤み
- かゆみ
- 蕁麻疹
- 丘疹(小さなぶつぶつ)
- 苔癬化(皮膚が厚く硬くなる)
アトピー性皮膚炎の子どもでは、ダニアレルギーが症状の悪化要因となることが多く、強いかゆみで睡眠が妨げられることもあります(※1)。
また、ダニアレルギーの皮膚症状は、鼻炎や喘息などの他のアレルギー症状と同時に現れるケースもよく見られます。
子どもはかゆみを我慢するのが難しく、掻き壊しによる症状悪化を招きやすいため、治療と並行して日々の観察やスキンケアも大切です。
(※1 参考)日本皮膚科学会|アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024
何歳ごろから多い?子どものダニアレルギーの割合
ダニによるアレルギー反応は、2〜3歳ごろから少しずつ増加しはじめるとされています。
以下は、ダニを含むハウスダストを主なアレルゲンとする、通年性アレルギー性鼻炎の年齢別感作率・有病率の目安です。
年齢 | 通年性アレルギー性鼻炎の感作率・有病率(主な原因抗体:ダニ・ハウスダスト) |
0〜4歳 | 4.0% |
5〜9歳 | 22.5% |
10〜19歳 | 36.6% |
※1
年齢が上がるにつれて感作率が増加するのは、アレルゲンに繰り返し暴露されることで、アレルギー反応を引き起こす抗体(IgE抗体)が産生されやすくなるためです。
特に小児期から思春期にかけては、身の回りのアレルゲンに繰り返しさらされる機会が多くなります。
早い段階から寝具の管理や湿度対策などの環境整備を行い、アレルゲンとの接触機会を減らすことが重要です。
(※1 参考)川島 佳代子,他|食物アレルギー患児における吸入抗原感作の検討
子どもがいる家庭のダニアレルギー対策

ダニアレルギー対策の基本は、日々の掃除と空気環境の管理です。子どもは自分でできる範囲が限られるため、保護者のきめ細かなサポートが重要になります。
- ダニの発生を防ぐ環境づくり
- 寝具の手入れ
- 掃除機がけ
上記3つは、アレルゲンの曝露を軽減する有効な方法です。それぞれの対策と注意点について詳しく解説します。
ダニの発生を防ぐ環境づくり

ダニの繁殖を抑えるためには、湿度管理と換気を中心とした環境整備が効果的です。以下に、ダニの発生を防ぐ環境づくりのポイントをまとめています。
ダニ対策環境づくり | 具体的な内容 | ポイント |
湿度管理 | ・除湿機やエアコンのドライ機能を活用・各部屋に湿度計を設置 | 室内湿度は50%前後を維持 |
通風・換気 | ・窓を定期的に開ける・換気扇は長めか24時間稼働 | ダニの餌になるカビの発生にも注意 |
布製品の見直し | ・フローリング、ブラインドカーテンなどの掃除しやすい素材に置き換え・丸洗いできる毛布や布団を使用 | ポリエステルやウレタンなどの化学繊維はダニが繁殖しにくい |
※1
ダニは湿度60%以上の多湿環境を好み、温度が20〜30℃・湿度70%以上になると急激に繁殖しやすくなります。
特に梅雨や夏場は高温多湿になりやすいため、各部屋の湿度状態をこまめに確認し、除湿と換気の徹底が重要です。
また、カーテンやラグなどの布製品はダニが繁殖しやすいため、掃除しやすい素材に替えるのも効果的です。
(※1 参考)日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌|小児アレルギー性鼻炎診療の手引き
寝具の手入れ

子どもは睡眠時間が長いため、布団やベッドなど寝具周辺のダニ対策は特に重要です。以下に、ダニ対策に効果的な寝具の手入れ方法をまとめています。
ダニ対策寝具の手入れ | 具体的な内容 | ポイント |
洗濯・高温乾燥 | ・ぬいぐるみや寝具などは週1回以上洗濯・60℃以上の高温水や乾燥機を活用 | クリーニングやコインランドリーの高温乾燥を活用 |
掃除機での除去 | ・干した後に掃除機や専用ノズルで吸引 | 干しただけではダニの死骸やフンは除去できない |
防ダニカバーの活用 | ・布団やマットレス全体を覆う | 高密度生地タイプや薬剤使用などから選べる |
※1
生きたダニは水洗いだけでは完全に駆除できないため、高温乾燥で駆除する必要があります。
ダニは60℃以上で瞬時に死滅し、50℃でも20〜30分の加熱で駆除が可能とされています。布団乾燥機やコインランドリーの高温乾燥などを活用するとよいでしょう。
防ダニカバーには、高密度生地タイプや薬剤を配合したタイプがあります。小さな子どもがいるご家庭では、肌への刺激や安全性に配慮して選ぶことが大切です。
(※1 参考)日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌|小児アレルギー性鼻炎診療の手引き
床面の掃除機がけ

ダニはフケや髪の毛、ホコリなどを餌にして繁殖するため、床面の掃除機がけで部屋の清潔に維持することが重要です。
以下に、ダニアレルゲンを除去する掃除機がけのポイントをまとめています。
ダニ対策床面の掃除機がけ | 具体的な内容 | ポイント |
床面の掃除機がけ | ・週2回以上、換気しながら行う | 1㎡あたり20~30秒かけてゆっくり丁寧に |
掃除機自体のメンテナンス | ・定期的に紙パックを交換・排気フィルターの掃除 | ペットがいる場合は掃除機のメンテナンス頻度は高めにする |
※1
床面だけでなく、家具の裏側や隙間、敷物の下などホコリや髪の毛が溜まりやすい場所まで、丁寧に掃除機をかけることが大切です。
また、掃除機の紙パックやフィルターがダニの温床になることもあり、排気でアレルゲンが室内に拡散される恐れがあります。
定期的な紙パックの交換やフィルター清掃も含め、こまめな手入れを習慣づけることは、ダニアレルギーの管理と予防意識を高めることにつながります。
(※1 参考)日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌|小児アレルギー性鼻炎診療の手引き
ダニアレルギーの検査・診断方法
子どものダニアレルギーの診断は、症状とアレルギー検査の結果を合わせて総合的に行います。
小さい子どもの場合、症状をうまく訴えられないことも多いため、普段の様子も大切な診断材料となります。
通常、アレルギー検査は以下の2つから検討されます。
- 血液検査(特異的IgE抗体検査)
- 皮膚プリックテスト
それぞれの検査方法について詳しく解説していきます。
血液検査(特異的IgE抗体検査)

血液検査では、ダニに対する血液中の抗体(IgE抗体)の量を測定し、アレルギーの有無や程度を評価します。
血液検査 | 詳細 |
検査方法 | 血液中のダニに対するIgE抗体の量を測定 |
判定 | クラス0~6の7段階で表示(クラスが高いほど感作が強い) |
判定までの時間 | 数日〜1週間 |
費用目安(3割負担) | 約3,000〜5,000円 |
※1
少量の採血で実施でき、食事の影響をほとんど受けないため、受診のタイミングを気にする必要はありません。
小さなお子さんの場合、指先から少量の血液を採取する方法(例:ドロップスクリーン)が選択されることもあります。
なお、血液検査で陽性反応が認められても、必ず症状が現れるとは限りません。検査結果に加え、普段の症状や生活の様子も含めて評価されます。
皮膚プリックテスト

皮膚プリックテストは、ダニや花粉、食物などを原因とする即時型アレルギー反応の診断に有効な検査です。
痛みや出血はほとんどなく、血液検査では把握しにくいアレルゲン感作を確認できる場合もあります。
皮膚プリックテスト | 詳細 |
検査方法 | 皮膚にアレルゲン液を滴下し、専用針で皮膚を刺激し反応を観察 |
判定 | 膨疹(水ぶくれ)や赤みの大きさで陽性・陰性を判定 |
判定までの時間 | 約20~30分(当日に判定できる) |
費用目安(3割負担) | 約2,000~4,000円 |
※1
皮膚プリックテストは結果が当日分かるため、再来院の必要がないこともメリットのひとつです。
乳幼児では皮膚反応が弱く、膨疹や赤みが現れにくいことがあるため、他の検査や日常症状も合わせて総合的に評価されます。
なお、皮膚プリックテストは抗アレルギー薬の影響を受ける場合があるため、服用中の薬があれば事前に医師に伝えましょう。
当院ではアナフィラキシーの危険性があるためプリックテストは行なっておりません。
(※1 参考)日本アレルギー学会|皮膚テストの手引き
子どものダニアレルギー治療方法

子どものダニアレルギー治療は、主に以下の2つから検討されます。
- 薬物療法
- 舌下免疫療法(適応年齢5歳以上※当院では6歳以上から開始可能)
治療の選択には、年齢や症状の重さ、日常生活への影響、ご家族の意向などが考慮されます。
それぞれの治療法について詳しく解説していきます。
薬物療法

子どものダニアレルギーに対する薬物療法は、発症した症状を緩和・コントロールすることを目的とする対症療法です。
小児のアレルギー治療では、副作用が少なく長期使用に適した第2世代抗ヒスタミン薬が第一選択薬とされています(※1)。
以下は、使用実績の多い代表的な薬剤です。
- 第2世代抗ヒスタミン薬:くしゃみ・鼻水・鼻詰まりの基本治療薬
- ステロイド点鼻薬:強い鼻閉が続く場合
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:気管支喘息を合併した場合
治療薬は、年齢や重症度、既往歴、安全性などを総合的に考慮して選択されます。
慢性的な症状や重症例では、室内環境の見直し(ダニ対策)やアレルゲン免疫療法の併用も検討されます。
(※1 参考)日本アレルギー学会|ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版)
舌下免疫療法(適応年齢5歳以上)

舌下免疫療法は、微量のダニアレルギーの原因物質(アレルゲン)を舌の下に投与し、体を徐々に慣らしていく治療法です。
過剰な免疫反応を抑え、根本的な体質改善や長期的な寛解が期待できる治療法として注目されています。
舌下免疫療法 | 治療方法の詳細 |
投与方法 | アレルゲン錠剤または液を舌下投与し、1分程度保持した後に飲み込む |
実施場所 | 初回は医療機関で実施、以降は自宅で投与 |
投与頻度 | 1日1回 |
治療期間 | 3年以上の長期継続が推奨 |
適応年齢 | 原則5歳以上が対象 |
※1
舌下免疫療法は、5歳以上で薬剤を舌下に約1分間保持できる子どもが対象です。
初回のみ医療機関で投与し、安全性に問題がなければ2回目以降は自宅で保護者のサポートのもと継続します。
口腔のかゆみや刺激感など軽い副作用が見られることもありますが、多くは自然におさまります。
ただし、強い症状や違和感が続く場合は投与を中止し、すぐに医療機関を受診してください。
(※1 参考)PMDA|ミティキュア ダニ舌下錠
よくある質問
子どものダニアレルギーについてよくある質問をまとめています。
Q.子どもがハウスダストアレルギーになるのは親のせいですか?
子どものハウスダストアレルギーは、必ずしも親のせいとは言えません。
ハウスダストアレルギーは遺伝的体質や生活環境など複数の要因が関与しており、親がどれだけ気をつけても発症する場合があります。
必要以上に責任を感じ過ぎず、できる範囲で対策することが大切です。
Q.子どものダニアレルギーは大人になったら治りますか?
成長とともに症状が軽くなるケースはありますが、完全に治るとは限りません。アレルギー体質は遺伝的な要素も関係するため、成人後も症状が残ることがあります。
根本的な体質改善にはアレルゲン免疫療法が有効とされ、早期からの治療が大切です。
Q.ダニアレルギーのピークはいつですか?
ダニアレルギーは通年性ですが、特に9月から秋にかけて症状が悪化しやすい傾向があります。
春・夏の高温多湿な環境でダニが繁殖し、夏の終わりに大量のダニが死滅することで、室内にフンや死骸が増えるためです。
まとめ

子どものダニアレルギー症状の管理や対策には、早期発見と保護者による継続的なサポートが欠かせません。
年齢や症状に応じた治療を安全に進めるためには、医師の評価と指導が重要です。
ふくろうの森クリニックでは、ダニアレルギーの検査・治療を行っています。
症状に応じた薬物療法に加え、根本的な体質改善を目指す舌下免疫療法にも対応しています。
「家にいるとくしゃみが止まらない」
「子どもがいつも目をこすっている」
「もしかしてダニアレルギーかも…」
このようなお悩みがある方は、当院へご相談ください。ご家族でのご相談も可能です。
花小金井駅から徒歩5分。待ち時間の少ないネット予約もご利用いただけます。

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