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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人

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2025.01.30

妊婦さんの10人に1人程度が発症する可能性があるといわれている“妊娠糖尿病”。

妊娠糖尿病は、妊娠中に胎盤から分泌されるホルモンの影響で、インスリンの働きが弱くなり血糖値が高くなるために発症する病気です。

妊娠糖尿病になりやすいタイプの人もいますが、突然発症してしまうケースも多く決して他人事ではありません。

本記事では妊娠糖尿病の原因や症状、なりやすい人を解説します。合わせて妊娠糖尿病が赤ちゃんに与える影響や治療方法、産後に気をつけることを説明します。

妊娠糖尿病はどんな病気?

妊娠糖尿病はどんな病気?

妊娠糖尿病とは、妊娠中に発見したまたは発症した軽い糖代謝異常のことです。

妊娠中に検査をおこなった全妊婦の7-9%程度が妊娠糖尿病と診断されています。

なお、妊娠前から糖尿病であった人が妊娠した糖尿病合併妊娠や、妊娠前から糖尿病の可能性や疑いがあった人が妊娠した妊娠中の明らかな糖尿病などとは分けて考えます。

原因

妊娠すると、お母さんの体の中では次のようなことがおこります。

①血糖値を下げるインスリンを壊す酵素が胎盤から分泌される
②胎盤から出るホルモンの影響でインスリンの効きが悪くなる

妊娠すると胎盤の働きにより、妊娠前と比べ誰もが血糖値が高くなる可能性があります。そのうち、一定の基準を超えた場合に妊娠糖尿病と診断されるのです。

症状

多くの方は妊娠糖尿病の自覚症状がありません。

糖尿病の患者さんが感じやすい、のどの渇きや疲れやすさなどの高血糖症状は感じにくいです。その理由は、妊娠をきっかけに血糖値がいつもより少し高い状態が続いているだけだからです。また食事や運動などに気をつければある程度は血糖値が下がるため、常に血糖値が高いときに現れるような症状は出にくいのです。

しかし自覚症状がないとはいえ、血糖値が高い状態が続くと次のような症状が現れることがあります。

  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水過多
  • 感染症にかかりやすくなる(膀胱炎や腎盂腎炎など)

そのほかにも羊水が多すぎるために子宮頚管が短くなり、早産や流産のリスクが高くなったり、赤ちゃんが大きく育ちすぎて経腟分娩が難しくなってしまい帝王切開になったりもします。

診断方法

日本産婦人科学会では妊娠糖尿病の早期診断のために、妊娠初期と妊娠中期に妊娠糖尿病のスクリーニング検査をおこなうことを推奨しています。

また妊娠初期の1回目の検査では問題がなくても、妊娠経過とともに妊娠糖尿病を発症するケースもあるため、妊娠中期にもスクリーニング検査をおこないます。

診断方法は妊娠初期は、病院に行ったタイミングでの血糖値を調べる随時血糖法を。妊娠中期には随時血糖法もしくは、50gブドウ糖負荷試験をおこないます。

随時血糖値が95mg/dl以上もしくは、50gブドウ糖負荷試験140mg/dl以上をスクリーニング陽性と判断し、妊娠糖尿病診断のために75gブドウ糖負荷試験で詳しく調べます。

75gブドウ糖負荷試験はブドウ糖を摂取する前、ブドウ糖摂取1時間後、2時間後の血糖値を調べる検査です。以下の基準を1つ以上満たした場合に妊娠糖尿病と診断します。

空腹時血糖 92mg/dl以上ブドウ
糖摂取1時間後   180mg/dl以上
ブドウ糖摂取2時間後   153mg/dl以上

妊娠糖尿病になりやすい人

妊娠糖尿病になりやすい人

妊娠糖尿病になりやすい人や、妊娠糖尿病になりやすい体質が疑われる人は以下のとおりです。

  • 肥満
  • 35歳以上の高齢妊娠
  • 家族や血縁関係者に糖尿病の人がいる
  • 尿検査で尿糖が陽性になっている
  • 以前の出産で体重の大きい赤ちゃんを産んだことがある
  • 原因不明の流産・早産・死産の経験がある
  • 先天性奇形の赤ちゃんを出産した経験がある
  • 羊水が多い(羊水過多)
  • 妊娠高血圧症候群と診断されている、もしくは診断されたことがある

ただし、これらに当てはまらない妊婦さんでも妊娠糖尿病と診断されることはゼロではありませんので、妊娠中のスクリーニング検査を受けるようにしましょう。

妊娠糖尿病が赤ちゃんに与える影響

妊娠糖尿病が赤ちゃんに与える影響

妊娠中にお母さんの血糖値が高いと、赤ちゃんにさまざまな影響(合併症)を及ぼします。

その影響は胎児・新生児期だけでなく、大人になってからも続くことが明らかになっていて妊娠中の診断・治療が欠かせないのです。

胎児期・巨大児(赤ちゃんの体重が4000gを超える)
・肩甲難産(出産時赤ちゃんの肩が産道にひっかかり難産になる)
・子宮内胎児死亡(子宮内で赤ちゃんが亡くなってしまう)
新生児期・新生児低血糖
・新生児高ビリルビン血症
・新生児低カルシウム血症
・新生児呼吸窮迫症候群
小児~成人期・肥満
・メタボリックシンドローム

妊娠糖尿病の治療方法~食事・運動・薬~

妊娠糖尿病の治療の目的は、血糖値を妊娠糖尿病ではない妊婦さんに限りなく近づけ、さまざまな合併症をおこさず妊娠期間を終えることです。

妊娠中の血糖値の目標値は以下のとおりです。

空腹時血糖 60-100mg/dl
食事を食べ始めてから1時間後   140mg/dl以下
食事を食べ始めてから2時間後   120mg/dl以下

これらの範囲内で血糖値をコントロールするために、食事療法・運動療法をおこない、それでも血糖値がコントロールできない場合に薬をつかった治療をおこないます。順に解説します。

食事療法

妊娠中の食事療法は、なんでも我慢したり制限したりすればいいというわけではありません。妊娠中の血糖値を安定させるための食事療法で重要なポイントは、以下の3点です。

  • お母さんと赤ちゃんが健康に過ごせるためのエネルギーが維持される
  • 食後に血糖値が高くなりにくい
  • 空腹時にお母さん脂肪が使われてケトアシドーシスにならない

体重が増えすぎたり栄養が不足したりしないように、さらには赤ちゃんの発育やお母さんの健康に支障をきたさないように、栄養バランスのととのった食事がとても重要です。

1日3食規則正しく食事をしても血糖値が高くなってしまう方は、1日の食事を6回に分けて食べる6分食という方法をとります。これにより食後の血糖値の上昇が抑えられるだけでなく、空腹時にお母さんの脂肪を燃やしてエネルギーを維持する必要もなくなるため、メリットの多い食事療法なのです。

運動療法

糖尿病患者さんはインスリンの働きを改善し血糖値を下げるために、適度な運動が推奨されています。

しかし流産や早産のリスクがある、血圧が高いなどのさまざまな理由で運動が難しいケースも少なくありません。

お母さん・赤ちゃんの負担にならないように、必ず医師の許可を得てから運動するようにしましょう。

運動内容はランニングや筋トレではなく、ウォーキング・体操・ヨガなどの有酸素運動が効果的です。気分が悪くなったり、疲れすぎたりしない程度に1回30分程度。週3~4回を目安におこなうとよいでしょう。

薬物療法

薬物療法は、食事や運動に気をつけても血糖値が下がらないときにおこないます。

糖尿病の薬は数多くありますが、妊娠中の薬物療法はインスリンt注射が選択されます。その理由は、飲み薬は胎盤を通して赤ちゃんに影響を与える可能性がゼロではないからと、インスリン注射の方が飲み薬よりも血糖値が下がりやすいからです。

妊娠糖尿病の方が産後に気をつけること

妊娠糖尿病の方が産後に気をつけること

妊娠糖尿病の方の血糖値は、出産後数日から数週間かけて正常範囲に戻ることが一般的です。

しかしまれに糖尿病に移行してしまうケースもありますから、産後の検診で随時血糖値を調べたり、ブドウ糖負荷試験をおこなったりして定期的にフォローしていく必要があります。患者さんによっては、生涯にわたって継続的にフォローしているケースもあるのです。

産後のフォローのタイミングや頻度・期間については、お一人おひとり異なりますので、ぜひかかりつけの産婦人科医師や内科医師にご相談ください。

また、以下に紹介する国立成育医療センターが発行する『妊娠中に「血糖が高い」といわれた方へ』に大変わかりやすくまとまっています。ぜひご参照下さい。

https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-leaf01.pdf

妊娠前も出産後も……あなたの身体を守る花小金井ふくろうの森クリニック

妊娠糖尿病はいままで糖尿病ではなかった方も、発症する可能性がある病気です。妊娠糖尿病を発症しやすい、発症リスクの高い人も一定数いますが、そうでない方でも発症する危険性があります。

妊娠糖尿病は産後も継続的に検査をおこない、糖尿病予備軍や糖尿病になっていないかを調べ、血糖値が高くなってきた場合には早期の治療開始が必要です。その際は、お近くのかかりつけ医療機関への受診をおすすめしています。

東京都小平市の花小金井駅徒歩5分のふくろうの森クリニックでは、耳鼻咽喉科だけでなく内科・皮膚科の病気を患っている患者さんを、臨床経験豊富な医師が総合的に診療しています。

お忙しい方も土日・祝日も診療が受けられますので、お気軽にふくろうの森クリニックへご相談ください。

参考資料

1)妊娠と糖尿病 国立成育医療センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-jsdp.html

2)糖尿病と妊娠に関するQ&A 日本糖尿病・妊娠学会
https://dm-net.co.jp/jsdp/qa/c/q02

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