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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人

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2025.01.28

日本人の5人に1人が発症するといわれている糖尿病。

インターネットやSNSでは糖尿病は”おしっこが甘くなる”、“太っている人がなる”、“生活が乱れているとなりやすい”など、さまざまな情報があふれていますが、その多くは間違っている情報だということは知っていましたか?

近年の研究では、生活習慣など本人が体に悪いことをしていなくても、突然発症する糖尿病や、ほかの病気が原因で発症する糖尿病があることがわかってきました。

本記事では糖尿病とはどのような病気かをまず解説します。さらに糖尿病の原因や種類、糖尿病の予防方法までわかりやすく解説します。

「糖尿病についてよく知らないな」
「家族や大切な人が、糖尿病だといわれた」
「自分は糖尿病にはなりたくない」

という方は、ぜひ本記事をお読みください。

糖尿病とは?

糖尿病とはさまざまな要因で「インスリンが十分に分泌されず働かないために、血糖値が高くなる状態」のことです。

日本人の5人に1人がかかっているだけでなく、予備軍の人も含めると6人に1人がかかっているといわれるくらいとても身近な病気です。

糖尿病の診断には、以下の検査項目の基準値が用いられます。

  • 空腹時血糖126㎎/dl以上
  • 随時血糖値200㎎/dl以上
  • 75gOGTT 2時間値200㎎/dl以上
  • HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)6.5%以上

異なる日に2回以上検査をおこない、上記の基準値を超えていたときに”糖尿病”と診断します。

もし、1回しか検査をおこなっていなくとも、血糖値とHbA1cの両方が診断基準を上回っているときも、糖尿病と診断されます。

引用 糖尿病臨床診断のフローチャート  糖尿病診療ガイドライン2019
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-01.pdf

糖尿病の原因

糖尿病は、次のような原因で発症する可能性があります。

  • 生活習慣
  • 遺伝や病気
  • 原因不明

ここで注目していただきたいことは、全ての糖尿病患者さんが生活習慣が原因で発症しているわけではないという点です。

糖尿病患者さんに対して『自堕落な生活をしていたから糖尿病になった』というイメージを持っている方は少なくありません。

実は、今ほど医療が発達していない時代には、遺伝で発症するタイプの糖尿病があることはわかっていませんでした。その結果、多くの患者さんが発症している糖尿病の原因=生活習慣が影響していると考えられ、糖尿病の誤ったイメージが定着してしまったのです。

糖尿病患者さんの中には、遺伝や病気などご自身のせいではないのに糖尿病を発症してしまった方もたくさんいます。また、どれだけ生活習慣に気をつけていても、将来あなた自身が糖尿病になってしまう可能性はゼロではないのです。

糖尿病の種類

糖尿病と聞いて多くの方がイメージするのは、生活習慣が原因で発症するタイプの糖尿病である“2型糖尿病”です。

実は、糖尿病にはさまざまな種類があり、2024年夏の時点では、大きく以下の7つのタイプに分類できます。

  • 1型糖尿病
  • 2型糖尿病
  • 遺伝で発症する糖尿病:MODY
  • 膵臓の病気で発症する糖尿病:膵性糖尿病
  • 妊娠をきっかけに発症する糖尿病:妊娠糖尿病
  • DNAの変性で発症する糖尿病:ミトコンドリア糖尿病
  • 病気がきっかけで発症する糖尿病:二次性糖尿病・ステロイド糖尿病

1型糖尿病

自分の免疫が暴走して膵臓の細胞が壊れてしまったために、インスリンの分泌ができなくなるタイプの糖尿病です。

小学生から思春期頃の若い世代で発症するケースが多いです。

発症の原因は生活習慣ではなく、9割の患者さんが自己免疫の異常。残りの1割は原因不明といわれています。

1型糖尿病は遺伝することはないといわれていますが、特定の遺伝子を持っていると発症リスクがあがるため、きょうだいや親族間で患者がいるケースも報告されています。

2型糖尿病

生活習慣や遺伝などさまざまな要因で、インスリンの分泌や効きが悪くなって発症するタイプの糖尿病です。

大人になって発症する人が多く、糖尿病患者の9割以上を占めています。

遺伝することはありませんが、両親・きょうだいに2型糖尿病患者がいると、同じ生活習慣をしている可能性が高いために、糖尿病発症リスクが2~4倍上昇します。

遺伝で発症する糖尿病:MODY

MODY(maturity onset diabetes of the young)は、遺伝子が変異して発症するタイプの糖尿病です。

比較的若い年齢で発症した糖尿病患者のうち、肥満ではない25歳以上の糖尿病患者のうち11.5%を占めるといわれています。

家族やきょうだいにMODYの患者がいると、50%の確率で遺伝するといわれています。

膵臓の病気で発症する糖尿病:膵性糖尿病

膵炎や膵臓がんなどの病気で膵臓の働きが低下したり、膵臓を切除したために膵臓の機能を失ったためにインスリンの分泌が不十分となって発症するタイプの糖尿病です。

膵性糖尿病は膵臓の病気が原因で発症するため、遺伝することはありません。

妊娠をきっかけに発症する糖尿病:妊娠糖尿病

妊娠をしてはじめて発見された糖代謝異常のことで、糖尿病の診断基準には該当しない程度の軽度の糖代謝異常です。

胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンの働きが悪くなるだけでなく、インスリンを壊す酵素も分泌されます。その結果、妊娠していない時よりもインスリンの量が少なくなり、働きも悪くなるため血糖値が高くなってしまうのです。

妊娠糖尿病は妊婦さんの10人に1人以上が発症する可能性があります。しかし、多くの方が出産を契機にインスリンの働きが改善し、糖代謝異常も改善します。

DNAの変性で発症する糖尿病:ミトコンドリア糖尿病

ミトコンドリア糖尿病は、細胞の中にあるミトコンドリアDNAが変異し、インスリンの分泌に欠かせない膵β細胞の働きが低下したために発症する糖尿病です。

国内の糖尿病患者の約1%程度がミトコンドリア糖尿病だといわれていますが、見逃されている方も多いのが実情です。

ミトコンドリア糖尿病は遺伝する可能性があります。母親からのみ遺伝することがわかっていますが、母親がミトコンドリア糖尿病だからといって、必ずその子どももミトコンドリア糖尿病になるとは限りません。

ミトコンドリア糖尿病を治す方法は解明されておらず、ほかの糖尿病と同様にインスリンでの治療が不可欠です。

病気がきっかけで発症する糖尿病:二次性糖尿病・ステロイド糖尿病

病気や薬の投与がきっかけで発症する糖尿病を二次性糖尿病といいます。そのうち、ステロイドの投与が原因で発症する糖尿病をステロイド糖尿病というのです。

二次性糖尿病を発症する原因は、前述の膵臓の病気以外にも、内分泌系の病気、免疫や感染症など多岐にわたっています。

ステロイドを使用すると、肝臓からの糖の放出が増えて血管内の糖分が増えるだけでなく、インスリンの働きが抑制され血糖値が高くなります。さらにステロイドの副作用で食事摂取量が増加し、血糖値が高くなることもステロイド糖尿病発症の一因となっているのです。

ステロイド糖尿病は、ステロイドを長期・多量に投与すると発症リスクが高くなりますが、ステロイドの投与が終了すると軽快する方が多いです。

糖尿病の症状

多くの場合、糖尿病は自覚症状がありません。

少しくらい血糖値が高くなっても、身体には症状が現れないのが一般的です。

とくにゆっくりと進行し、年単位でインスリンの働きが悪くなり、血糖値が高くなっていく2型多糖尿病では全身に合併症がおこるくらい重症にならないと、症状として現れないのです。

しかし、劇症型や1型糖尿病など一部の糖尿病では、血糖値が500mg/dlを超えるような高血糖になり吐き気や嘔吐、意識障害などが出現する場合もあります。

糖尿病の予防方法

糖尿病を予防するには、次のような方法があります。

  • 糖尿病のリスク因子を理解し回避する
  • 定期的な検査と早期治療を始める

糖尿病のリスク因子を理解し回避する

【リスク因子】とは、『ある病気や状態を引き起こす確率を高める要因のこと』です。

近年の研究では、糖尿病の発症にはさまざまなリスク因子が関連していることが明らかになっています。

厚生労働省は糖尿病のリスク因子を、日常生活などの改善で「変えられるもの」と「そうでないもの」の2つに分類しています。

  • 変えられるリスク因子
  • 肥満
  • 身体的活動の低下(運動不足)
  • 耐糖能異常(血糖値の上昇)
  • 高血圧
  • 高脂血症
  • 変えられないリスク因子
  • 加齢
  • 家族歴
  • 遺伝子異常
  • 他の原因で発症した代謝異常

年齢を重ねることや、遺伝は自分の努力では変えることができないリスク因子です。

一方、肥満や運動不足、血糖値の上昇や高血圧・高脂血症は、生活や食事の習慣を見直したり適切な治療を受けることで糖尿病発症のリスクが低減できる、“変えられるリスク因子”です。

また、糖尿病診療ガイドライン2024では、糖尿病のリスク因子を「糖尿病になりやすい因子」と「糖尿病になりにくくなる因子」の2つに分類し詳しく紹介しています。

  • 糖尿病になりやすい因子
  • BMIが高い
  • 子ども~大人になり始めの時期にかけて体重が多い
  • 座っている時間が長い
  • 甘い飲み物や人工甘味料のジュースや果物ジュース
  • 喫煙・受動喫煙
  • うつ病・精神的ストレス
  • 劣悪な労働環境や社会環境
  • 糖尿病になりにくくなる因子
  • 1日に歩く歩数が増える
  • 速足の割合が多くなる
  • 生活習慣を改善し2kg減量する
  • 食物繊維や食事性マグネシウムの摂取が増える

いずれも、生活や食事などに注意することで変えられる因子ばかりです。るリスク因子に心当たりがある方や、糖尿病になりたくない方は生活習慣を変えてみてはいかがでしょうか?

定期的な検査と早期治療の開始

糖尿病の悪化を防いだり、合併症がおこらないようにしたりするためには、糖尿病の早期発見が欠かせません。

糖尿病の疑いかどうかは、学校や会社・地域の医療機関で受ける健康診断でわかります。そのほかに、献血の際に調べるグリコアルブミンという値で、糖尿病の疑いがあることを指摘されるケースも……。

またお近くの医療機関では、採血で糖尿病の疑いがあるかどうかを調べることができます。

血糖値が高い期間が長くなればなるほど、身体にさまざまな合併症を発症する可能性が高くなります。

年1回の定期的な検査で、糖尿病や糖尿病の予備軍を早く見つけ、早期の治療を開始し糖尿病を悪化させないようにしたいですね。

糖尿病の治療はふくろうの森のクリニックへ!

糖尿病は生涯にわたって、上手に付き合っていかなければならない病気です。仕事や家事・育児に忙しい日々を過ごしていると、どうしても通院が後回しになり、糖尿病を放置してしまう方も少なくありません。

適切な治療をおこなわないことで、心臓や脳・腎臓など全身の臓器にさまざまな合併症を発症する危険性もあります。

また大変残念なことですが、生活や食事に気をつけていても、遺伝やさまざまな病気の影響で発症する可能性はゼロではありませんので、早期発見と早期の治療開始がとても重要です。

東京都小平市の花小金井駅徒歩5分のふくろうの森クリニックでは、耳鼻咽喉科だけでなく内科・皮膚科の病気を患っている患者さんの治療もおこなっています。

土日も診療が受けられますので、すき間時間を活用して糖尿病治療と生活・仕事の両立が可能です。

ぜひ、お気軽にふくろうの森クリニックへご相談ください。

参考資料


1)糖尿病 一般社団法人日本内分泌学会
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=11

2)糖尿病診療ガイドライン2024
https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

3)糖尿病 健康日本21 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%82%92%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E3%81%A8,%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B4)%E3%80%82

4)糖尿病とは 糖尿病情報センター 国立国際医療研究センター
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html#01

5)危険因子 / リスク因子(きけんいんし / りすくいんし)厚生労働省

6)MODY(maturity onset diabetes of the young)  一般社団法人 日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=96

7)ミトコンドリア糖尿病  一般社団法人 日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=97

8)ステロイド糖尿病 一般社団法人 日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=99

9)21章 2型糖尿病の発症予防 糖尿病診療ガイドライン2024
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/21.pdf

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