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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人

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2025.06.27

ストレスは皮膚のバリア機能や免疫の働きに影響を与え、かゆみや湿疹などの症状を引き起こすことがあります。

この記事では、ストレスによる皮膚炎の特徴や悪化のメカニズム、アトピーとの関連や治療方法について解説します。

ストレスと皮膚トラブルの関係を理解するための参考として、ぜひ最後まで読んでみてください。

ストレスが皮膚炎を引き起こす3つの理由

ストレスが皮膚炎の発症や悪化に関与していることは広く知られています。主な生理学的メカニズムとして、以下の3点が挙げられます。

  • 炎症反応の増強
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 自律神経・免疫系の乱れ

それぞれが皮膚にどのような影響を与えるのか、詳しく解説していきます。

炎症反応の増強

ストレスを受けると、体内でノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌され、炎症を抑える働きを持つ免疫細胞の機能が弱まります。

普段なら反応しない小さな刺激でも、赤み・かゆみなどの皮膚症状が強く現れやすくなります。

また、ストレスがヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質を増加させ、アトピー性皮膚炎が悪化するメカニズムも報告されています(※1)。

ストレスが長引くと炎症反応が繰り返され、皮膚炎が慢性化するケースも少なくありません。

(※1 参考)順天堂大学|精神的ストレスがアトピー性皮膚炎を悪化させるメカニズムを解明

ホルモンバランスの乱れ

ストレスが長期間続くと、ストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されます。

コルチゾールは本来、ストレスによる一時的な炎症を抑えるために必要なホルモンです。

しかし、コルチゾールが慢性的に過剰分泌されるとホルモンバランスが崩れ、皮膚のバリア機能低下や血流の悪化により、かゆみや炎症が起きやすくなります。

特に女性の場合、ストレスによってエストロゲンの分泌が減少しやすくなり、肌が乾燥しやすくなることがあります。

自律神経・免疫系の乱れ

ストレスによる自律神経の乱れは免疫バランスに直接影響し、アレルギー反応やかゆみが出やすくなり、皮膚炎の悪化リスクが高まります。

ストレスで交感神経が過剰に働くと血流が悪化し、皮膚に必要な栄養や酸素が届きにくくなります。

また、ストレスはアレルギー反応やかゆみを引き起こす物質を活発化させ、皮膚炎の悪化や再発を招きやすくなります。

自律神経は免疫細胞の働きにも影響するため、皮膚炎の悪化予防や症状改善にはストレス管理が重要です。

ストレスの関与が考えられる湿疹の現れ方や特徴

ストレスの関与が疑われる湿疹には、以下のような現れ方や特徴があります。

  • アレルギーや特定の原因がないのに湿疹が現れる
  • 疲れた時にかゆみや皮膚症状が悪化・再発しやすい

それぞれの特徴について詳しく解説していきます。

アレルギーや特定の原因がないのに湿疹が現れる

アレルゲンや物理的刺激などの原因がないにも関わらず湿疹が現れる場合、ストレスが関与している可能性があります。

ストレスは免疫系や皮膚のバリア機能に影響を及ぼし、外部刺激がなくても皮膚炎を誘発・悪化させることがあるからです。

また、ストレスの関与が疑われる湿疹は、原因不明のまま症状の悪化や再発を繰り返しやすい傾向が見られる場合もあります。

疲れた時にかゆみや皮膚症状が悪化・再発しやすい

仕事や家事などで疲労がたまると湿疹が悪化・再発する場合、ストレスが背景にある可能性が考えられます。

ストレスは疲労を引き起こす原因の一つであり、免疫系やホルモンバランスが乱れることで脳や身体が疲労を感じやすくなります(※1)。

疲れが蓄積すると皮膚のバリア機能が低下し、アレルゲンや刺激が皮膚に侵入しやすくなります。

外部からの刺激に対して敏感になり、かゆみも強くなりやすく、掻き壊しによる炎症が長引くことも珍しくありません。

(※1 参考)倉恒弘彦, 渡辺恭良|国民的課題として取り組む疲労研究 -客観的疲労の評価法-

ストレスで悪化しやすい湿疹の種類と発症しやすい場所

ストレスの影響を受けやすい皮膚疾患には、以下のような種類があります。

  • アトピー性皮膚炎【顔、首、肘、膝の裏、手首など】
  • 皮膚掻痒症【全身または肛門周囲、陰部、頭など】
  • 手湿疹【指先、手のひら、爪周囲など】
  • かぶれ(接触皮膚炎)【原因物質が接触した部位】
  • 蕁麻疹【全身】

それぞれの疾患ごとに、特徴や発症しやすい部位などを詳しく解説していきます。

アトピー性皮膚炎【顔、首、肘、膝の裏、手首など】

ストレスだけがアトピー性皮膚炎の発症原因ではありませんが、症状の悪化や増悪には大きく関与しています。

ストレスが免疫機能や自律神経のバランスを乱し、バリア機能の低下やかゆみの増強、湿疹や赤みが悪化するメカニズムが明らかになっています(※1)。

好発部位は年齢によってやや異なりますが、顔や首、関節部に症状が現れやすいとされます。

アトピー性皮膚炎は患者の生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、国内外でさまざまな研究が進められています。

(※1 参考)日本皮膚科学会|アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024

皮膚掻痒症【全身または肛門周囲、陰部、頭など】

皮膚掻痒症は、皮膚に発疹や目立った異常がないにもかかわらず、強いかゆみを感じる疾患です。

皮膚掻痒症には明確な好発部位はなく、全身に痒みが現れる汎発性と、肛囲・陰部・頭部など特定の部位に痒みが現れる限局性に分けられます(※1)。

リスク因子・増悪因子には精神疾患や神経障害が挙げられており、ストレスも関連していると考えられています。

なお、皮膚掻痒症は内臓疾患が背景にある場合も多く、治療においては総合的な診断と対応が重要です。

(※1 参考)日本皮膚科学会|皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020

手湿疹【指先、手のひら、爪周囲など】

手湿疹は女性に多く、指先・手のひら・爪の周囲など日常的に刺激やアレルゲンに触れやすい部位に現れる皮膚疾患です。

主な皮膚症状は、かゆみ・赤み・小水疱(水ぶくれ)・ひび割れなどで、形態によって大きく異なります(※1)。

手湿疹とストレスに直接的な関連性はないと考えられていますが、手をよく使うことで皮膚への刺激が増え、症状が悪化しやすい傾向があります。

単なる手荒れではなく、他の皮膚疾患が合併している場合もあるため、医師の診断による治療が望ましいです。

(※1 参考)日本皮膚科学会|手湿疹診療ガイドライン

かぶれ(接触皮膚炎)【原因物質が接触した部位】

かぶれ(接触皮膚炎)は、手・顔・首・腕など外部刺激が直接触れる部位に多く現れます。

主な原因はアレルゲンや刺激物であり、ストレスは直接の発症要因ではありません(※1)。

しかし、ストレスによって皮膚のバリア機能が低下すると、わずかな刺激でもかぶれを起こしやすくなり、間接的に関与することがあります。

かぶれ予防の基本は原因物質の特定と回避ですが、バリア機能を維持するためにはストレスへの配慮も重要です。

(※1 参考)日本皮膚科学会|接触皮膚炎診療ガイドライン 2020

蕁麻疹【全身】

蕁麻疹はヒスタミンの放出によって、急激に皮膚に赤い膨疹(ふくらみ)が現れる疾患です。

蚊に刺されたように皮膚が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴うことが多く、全身どこにでも出現します。

急性蕁麻疹は、細菌・ウイルス感染などが原因となることがあります。

一方、慢性蕁麻疹では原因が特定できないことが多く、ストレスや疲労も発症や悪化に関与すると考えられています(※1)。

また、蕁麻疹はアナフィラキシーの初期症状や全身性疾患の症状として現れることがあります。

皮膚症状の他に、気分不良や呼吸の違和感などを感じる場合は、速やかに医療機関を受診してください。

(※1 参考)日本皮膚科学会|蕁麻疹診療ガイドライン 2018

ストレスが関与する皮膚炎の治し方

ストレスが関与する皮膚炎の治療では、以下の5つの対策を組み合わせることが一般的です。

  • スキンケア
  • 外用薬
  • 内服薬
  • ストレスの除去・軽減

それぞれの治療や対策について詳しく解説していきます。

スキンケア

皮膚炎治療の基本は、保湿と皮膚の清潔維持を中心としたスキンケアです。

保湿は皮膚の乾燥を防ぎ、水分を保持することでかゆみの悪循環を断ちます。

また、皮膚を清潔に保つことはバリア機能の維持に不可欠であり、外部刺激やアレルゲンの侵入を防ぐことにもつながります。

日常的に使用する石鹸や洗浄剤は、使用感が良く、洗浄後に乾燥しにくい製品を選ぶことが大切です。

スキンケアを徹底することで症状の悪化や再発を抑制し、治療効果の向上が期待できます。

外用薬

皮膚の炎症やかゆみが強い場合には、抗炎症作用に優れたステロイド外用薬が第一選択肢として使用されます。

炎症により皮膚のバリア機能が低下すると、アレルゲンや刺激物が侵入しやすくなり、症状悪化や再発のリスクが高くなるからです。

細菌や真菌感染が疑われる場合には、抗菌薬や抗真菌薬の併用が検討されることもあります。

市販のステロイド外用薬も入手可能ですが、症状に合わない薬剤の使用は炎症を悪化させる恐れがあるため注意が必要です。

原因不明の湿疹が現れた場合は、早期治療のためにもまず医療機関を受診することが推奨されます。

内服薬

外用薬だけでは症状を十分にコントロールできない場合や、全身に強い症状が見られるケースでは、内服薬が補助的に用いられます。

広範囲の湿疹や強いかゆみにより掻き壊しが生じている場合は、内服薬でかゆみを抑え、皮膚症状の悪化を防ぐことが重要です。

また、かゆみのコントロールには抗ヒスタミン薬が処方されることが多いです。

重症例や急激な悪化が見られる場合は、ステロイドの内服薬が短期間使用されることもあります。

内服薬は副作用のリスクもあるため、患者の症状や状態に応じて慎重に選択されます。医師の指導のもと、用法用量を守ることが重要です。

ストレスの除去・軽減

精神的・環境的ストレスは、皮膚の炎症やかゆみを悪化させる要因として広く認識されています。

皮膚炎の治療においては、仕事の多忙や対人関係の悩みなどの悪化因子を軽減・除去することが推奨されます。

学校や職場などでは、医師が作成する配慮事項の文書を活用することで理解を得やすくなるでしょう。

完全にストレスを排除するのは困難ですが、ストレス管理と周囲のサポートは皮膚疾患の改善に欠かせません。

ストレスと皮膚炎についてよくある質問

ストレスと皮膚炎に関してよくある質問をまとめました。

Q.ストレスで出る湿疹はかゆくない場合もありますか?

かゆみの感じ方には個人差があり、湿疹が出ていてもかゆみを感じにくい方もいます。

しかし、一般的に湿疹が出ている場合、かゆみを伴うことが多いです。

かゆみを伴わない湿疹が長引く場合は、他の病気の可能性もあるため早めに皮膚科を受診してください。

Q.ストレスでアトピーは悪化しますか?

ストレスは自律神経や免疫バランスに影響を及ぼし、皮膚のバリア機能を低下させるため、アトピーの症状が悪化しやすくなります。

Q.アトピー性皮膚炎の原因はストレスですか?

ストレスだけがアトピー性皮膚炎の原因ではありませんが、悪化因子の一つとされています。

アトピー性皮膚炎は、遺伝的な体質・皮膚のバリア機能の低下・環境要因など、複数の要因が関与する皮膚疾患と考えられています。

まとめ

ストレスは皮膚炎や湿疹の悪化に関与しており、免疫機能や自律神経のバランスを乱し、皮膚のバリア機能を低下させます。

アトピー性皮膚炎や蕁麻疹など、さまざまな皮膚疾患でストレスの影響が指摘されています。

皮膚炎の治療には、スキンケアや薬物療法に加え、ストレス管理や周囲の理解といった社会環境の整備も重要な役割を果たします。

医師や家族、友人などのサポートを得ながら、心身両面からのアプローチが大切です。

ふくろうの森クリニックでは、皮膚炎の症状やお悩みに合わせた治療を行っています。

アトピー性皮膚炎の診療は、お子さまから大人の方まで世代を問わずご相談いただけます。

「湿疹やかゆみがなかなか治まらない」

「もしかしてアトピーかもしれない」

「皮膚炎の原因が知りたい」

このようなお悩みがある方は、当院へご相談ください。

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