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医療コラム

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ふくろうの森クリニック
院長 山田正人

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2025.04.09

アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥とバリア機能の低下によりかゆみや炎症を起こす病気です。
アトピー性皮膚炎の治療薬には、次の3種類があります。

  • 外用薬(塗り薬)
  • 内服薬(飲み薬)
  • 注射薬

症状の程度や部位を見て、医師が適切な薬を判断します。

どんな治療薬があるのか、自分が今使っている薬がどんな薬なのか知りたい方に向けて、この記事ではアトピー性皮膚炎の主な治療薬をまとめました。

アトピー性皮膚炎の治療について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

外用薬

アトピー性皮膚炎の治療では、外用薬(塗り薬)がよく処方されています。
外用薬は炎症の改善から症状の管理まで、治療の幅広い用途で使われます。

外用薬の分類と、主な特徴をそれぞれまとめました。

薬の種類特徴
保湿薬皮膚の乾燥を防ぐ
ステロイド外用薬炎症を抑えるweak~strongestと5段階の強さに分類される
免疫抑制薬(タクロリムス)過剰な免疫を抑制する
JAK阻害薬免疫に関わるサイトカインという物質を抑制する
PDE4阻害薬炎症に関わる酵素(PDE4)のはたらきを阻害する
その他の非ステロイド系消炎外用薬ステロイドとは異なる機序で炎症を抑制する作用は比較的弱め

保湿薬

保湿薬の例(成分名)ヘパリン類似物質尿素製剤ワセリン亜鉛化軟膏
作用保湿
副作用まれに刺激感、赤み

アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥やバリア機能の低下により起こります。保湿剤により皮膚を乾燥から防ぐことで、症状をコントロールできます。

皮膚のバリア機能を保つためにも、保湿剤は症状が出ていない間も使用しましょう。特に入浴後は乾燥しやすいため、体を拭いたら欠かさず保湿を行います。

保湿剤には軟膏、クリームのほか、ローションタイプもあります。しっかり保湿したい方は軟膏、サラッとした使い心地がよければクリームタイプ、べたつかずすぐ乾くものを使いたい方はローションがおすすめです。

ステロイド外用薬

保湿薬の例(成分名)
 Ⅰ:weakプレドニゾロン
 Ⅱ:mediumトリアムシノロンアセトニドアルクロメタゾンプロピオン酸エステルクロベタゾン酪酸エステル
 Ⅲ:strongデキサメタゾンプロピオン酸エステルデキサメタゾン吉草酸エステルベタメタゾン吉草酸エステル
 Ⅳ:very strongベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン
 Ⅴ:strongestクロベタゾールプロピオン酸エステルジフロラゾン酢酸エステル
作用炎症を抑える
副作用感染、色素脱失、毛細血管拡張、皮膚萎縮、酒さ様皮膚炎、多毛

ステロイド外用薬は皮膚の炎症を抑える薬です。アトピー性皮膚炎の対症療法としてよく使われています。

強さによってweak~strongestの5種類に分類され、部位や皮膚の状態によって使い分けられます。

医師は診察により適切な強さの薬を処方しているので、ステロイド外用薬が処方されたら必ず指示通りに使いましょう。

(参考)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024|日本皮膚科学会

免疫抑制薬(タクロリムス)

免疫抑制薬の例(成分名)タクロリムス
作用炎症を抑える
副作用熱感、痛み、かゆみ、感染症

タクロリムス軟膏は免疫を抑え、炎症を改善する薬です。

ステロイド外用薬が使えない顔面や頸部、副作用によりステロイドの使用が難しいケースにはタクロリムス軟膏が使われます。ただしびらん、潰瘍には使えません。

タクロリムス軟膏はステロイド外用薬と同様に、よくアトピー性皮膚炎の治療に使われています。

(参考)プロトピック軟膏 添付文書|マルホ株式会社

JAK阻害薬

JAK阻害薬の例(成分名)デルゴシチニブ
作用免疫に関わるサイトカインという物質を抑制する
副作用毛包炎、ざ瘡、湿疹、刺激感、赤み

JAK阻害薬は細胞内の情報伝達を行う物質・サイトカインを抑制する薬です。2020年に日本で承認・販売されました。

サイトカインは免疫を活性化させ、かゆみや湿疹などの炎症反応を引き起こします。JAK阻害薬はサイトカインを抑えることで、アトピー性皮膚炎の症状を和らげます。

デルゴシチニブ軟膏は生後6ヵ月から使用できますが、1日あたりの回数や使用量が決まっているので使用には注意が必要です。

(参考)コレクチム軟膏 添付文書|日本たばこ産業株式会社・鳥居薬品株式会社

PDE4阻害薬

PDE4阻害薬の例(成分名)ジファミラスト
作用炎症に関わる酵素(PDE4)のはたらきを阻害する
副作用一過性の刺激症状

PDE4阻害薬にはジファミラスト軟膏という2021年に承認・発売された新しい外用剤があります。

PDE4とは、細胞の炎症反応に関わる酵素です。

細胞には炎症が起きた時、炎症を抑制する仕組みがあります。PDE4は炎症を抑制する仕組みを阻害して、炎症を促進するはたらきを持ちます。

ジファミラスト軟膏はPDE4を阻害することで、炎症を抑制して症状を改善する薬です。

(参考)モイゼルト軟膏 添付文書|大塚製薬株式会社

その他の非ステロイド系消炎外用薬

その他の非ステロイド系消炎外用薬として、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬があります。

これらの外用薬はステロイド外用薬より作用が弱いため、症状が軽い場合や、皮膚が薄くステロイド外用薬が使えない場合など限られたケースで使われます。

(参考)薬がみえる vol.2|メディックメディア

内服薬

外用薬のほか、かゆみや炎症が強い場合は内服薬も使われます。

アトピー性皮膚炎に使われる内服薬の種類と、特徴をそれぞれまとめました。

薬の種類特徴
抗ヒスタミン薬アレルギー症状を抑える
免疫抑制薬(シクロスポリン)過剰な免疫を抑制する
経口ステロイド薬炎症を抑える
JAK阻害薬免疫に関わるサイトカインという物質を抑制する

かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬がよく処方されます。

免疫抑制薬や経口ステロイド薬、JAK阻害薬は、外用薬や抗ヒスタミン薬の内服薬だけで症状が改善しない場合に検討されます。全身性の副作用が出やすいため、服用時は注意が必要です。

抗ヒスタミン薬

抗アレルギー薬の例(成分名)アゼラスチンエピナスチンフェキソフェナジンロラタジン
作用アレルギー症状を抑える
副作用眠気、だるさ

ヒスタミンはアレルギー反応に関わる物質で、抗ヒスタミン薬はヒスタミンの受容体を阻害してかゆみを抑えます。アトピー性皮膚炎のほか、花粉症やじんましんにも使われる薬です。

抗ヒスタミン薬をステロイド外用薬やタクロリムス軟膏と一緒に使用することで、かゆみに対する相乗効果が示されています。

(参考)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024|日本皮膚科学会

免疫抑制薬(シクロスポリン)

免疫抑制薬の例(成分名)シクロスポリン
作用過剰な免疫を抑制する
副作用腎障害、肝障害、感染症など

免疫抑制薬のシクロスポリンは免疫に作用してアレルギー反応を抑制し、炎症を改善する薬です。

ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬など、他の治療で効果が見られなかった場合に使用する場合があります。

シクロスポリンは、アトピー性皮膚炎では次の条件を満たす場合のみ処方されます。

  • ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の既存治療で十分な効果が得られない
  • 強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上に及ぶ

長期使用の安全性がわかっていないため、シクロスポリンは8~12週間で服用を終了します。

(参考)シクロスポリンカプセル 添付文書|サンド株式会社

経口ステロイド薬

経口ステロイド薬の例(成分名)プレドニゾロン
作用炎症を抑える
副作用成長障害、易感染性、骨粗しょう症

経口ステロイド薬は急激に症状が悪化した場合や、重症の場合に処方される薬です。炎症を抑えてアトピー性皮膚炎の症状を改善します。

長期間使うと全身性の副作用があるため、短期間に限って使われます。

ステロイド外用薬は経口ステロイド薬と違い局所的に作用するため、比較的安全に使用が可能です。

(参考)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024|日本皮膚科学会

JAK阻害薬

JAK阻害薬の例(成分名)ウパダシチニブアブロシチニブバリシチニブ
作用免疫に関わるサイトカインという物質を抑制する
副作用上気道感染、気管支炎、ざ瘡など

外用薬と同様、サイトカインを抑えてアトピー性皮膚炎を改善する薬です。

ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬など、他の治療で効果が見られなかった場合に使用します。

副作用のリスクから、JAK阻害薬とアトピー性皮膚炎に十分な知識・経験を持つ医師のみが処方するよう定められています。

(参考)リンヴォック錠 添付文書|アッヴィ合同会社

サイバインコ錠 添付文書|ファイザー株式会社

オルミエント錠添付文書|日本イーライリリー株式会社

注射薬

外用薬や内服薬で症状が改善しない場合、注射薬を使う場合があります。

生物学的製剤

生物学的製剤の例(成分名)デュピルマブ(IL-4、IL-13を阻害)ネモリズマブ(IL-31が結合する受容体を阻害)トラロキヌマブ(IL-13を阻害)
作用サイトカインの一部を抑制する
副作用注射部位の赤みやかゆみ、発疹、発熱など

アトピー性皮膚炎に使われる注射薬として、生物学的製剤があります。

生物学的製剤は近年新たに承認・発売された薬で、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬など、他の治療で効果が見られなかった場合に使用する薬です。

生物学的製剤は炎症に関わるサイトカイン、インターロイキンを阻害して症状を改善します。

(参考)デュピクセント皮下注 添付文書|サノフィ株式会社

ミチーガ皮下注用60mgシリンジ 添付文書|マルホ株式会社

アドトラーザ皮下注150mgシリンジ 添付文書|レオファーマ株式会社

当院でもアトピー性皮膚炎の処方を承っています

今回はアトピー性皮膚炎の治療薬について解説しました。
アトピー性皮膚炎は慢性的な病気なので、根気よく治療・管理を続ける必要があります。

治療には自分の症状に合った薬を使うことが大切です。

ふくろうの森クリニックでは耳鼻咽喉科・内科・皮膚科の診療を受け付けています。アトピー性皮膚炎の治療にも対応しております。

当クリニックは花小金井駅より徒歩5分の場所にあり、ネット予約も可能です。

「アトピー性皮膚炎を治療したい」
「皮膚がかゆく、アトピー性皮膚炎かもしれない」

このような方はぜひ、一度当院へご相談ください。

皮膚の状態や部位に合わせて、医師が適切な薬を処方します。

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